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★犬ゾリマッシャーへの手掛かりを求めて


私が最初に犬ゾリに関心を持ったのは、大学3年生の時です。オーロラが見たくてノースウエスト準州のイエローナイフに行ったのですが、そこで偶然見かけた「アラスカンハスキー」(ひょろ長い足に細い体で妙に人懐っこい犬)が懸命にソリを引く姿に、オーロラ以上に激しく感動したのです。大学を卒業して就職した後も「どうしても犬ゾリをしてみたい」と言う気持ちは収まることはありませんでした。

そこでカナダの観光局にメールを出し、第4回カナダチャンピオンになったグラント・ベックのベックケンネルの連絡先を教わりました。彼に犬ゾリレースをしたいという熱い気持ちを訴えたメールを送ると「履歴書を書いてくれ、検討する」という返事が!
一生懸命履歴書を書き送ってから1ヶ月後、なんと承諾のメールが来ました。


                            
         
      「9月からおいで!」
★チェックポイントでの交渉


グラントは、毎年アメリカ本土のワイオミングで行われるI.R.M.S.S.S.D.R(インターナショナル・ロッキー・マウンテン・ステージ・ストップ・スレッド・ドッグ・レース)などに出場しています。そこで私はマッシャー(グラント)のハンドラーとして働き出しました。

ハンドラーとは、犬を世話したりトレーニングをしたりしつつ、マッシャーから犬ゾリに関する様々な事を教わったり、犬を借りてレースに出たり、マッシャーのレースの手伝いをする(これがほとんどメイン)人のことです。
犬の世話や餌の管理、ソリの修理、ワラの手配、宿泊先の確保など、ハンドラーのやることは山積みで、とてもよい勉強をさせてもらえました。そして、グラントの元で働いて1年半が経つ頃には、自分の犬でレースに出たいと願うようになっていました。そこで、私をレースに出してくれるような新しいマッシャーを探して、その人のハンドラーになろうと思い、ネットでカナダ在住の長距離マッシャーを探しました。けれど詳しい住所も電話番号もさっぱり解りません。
最後の手段として、2月9日からスタートするユーコンクエストのゴールでマッシャーを待ち伏せし、直接お願いしてみようと決心しました。
イエローナイフからグレイハウンドのバスで3日間かけてホワイトホースへ、そこからさらに北上してドーソンシティ(クエストの通り道で36時間ストップのある町)に滞在中、クエストのチェックポイントでボランティアを募集しているという情報を入手。これは私のためにあるようなものだと、すぐに飛びつきました。










★偶然の出会いが招いた夢への切符
スノーモービルで6時間かけてようやく着いたそのチェックポイントでは、テント作り、薪割り、氷の割れ目からの水汲み、と言った仕事がメインです。マッシャーが到着すると、食べ物の準備や、仮眠用のテントに薪をくべて、お湯(犬用)を作ってあげながらさりげなく「ハンドラーは要りませんか?」と聞いて回る日々。まあ、結局は断られまくっていたわけなんですが・・・。

ジミー・ヘンドリックは「ハンドラー? 欲しいよ、無料だなんて大歓迎だ!」と言っくくれた唯一のマッシャーでした。私が「お金は要らないけど、住む場所と食べ物が欲しい。レースに出る機会が欲しい」と条件を出すと、「いつでもおいで」とのこと。けれど、彼の住まいはアラスカのデナリでした。大好きなカナダを後にするのはつらかったど、アラスカへ行くことにしました。
中古の自転車を50カナダドルで買い、ガスや食糧とドーソンの皆からもらったテントやシュラフをバギーに詰め込み、自転車でそのバギーを牽引しての出発。大きなトラックやキャンピングカーの人達に自転車ごと乗せてもらったりしながら12日目、「今日はここでもう限界」とくたびれ果てて自転車の上に倒れこんで休んでいると、1台の車が止まり、優しそうなおじさんが声をかけて来ました。

「僕も自転車が好きでね、どうしたの? 大丈夫?」話してみると、彼(ピーラー)はなんとマッシャーでした。親切にジミーのところまで送ってくれたのですが、彼はグランドキャニオンにバックパッキング中だったのです。帰ってくるのは2週間後。愕然とする私にピーラーは「とりあえずうちにおいで」と優しく言葉を掛けてくれました。涙が出そうでした。
ピーラーの家で、私は彼に犬ゾリレースに出たいという夢を語りました。すると、「ジミーではなく、レイミー・ブルックスの方がいいんじゃないかな?ここから近いし、彼ならよく知っているから紹介できる」とうれしい提案をしてくれたのです。

それからはトントン拍子でした。レイミーはおじいさんもお母さんもマッシャーで、2人ともノースアメリカンという有名な短距離レースのチャンピオンというすごい家系の人でした。レイミーと奥さんのキャシーには2人の女の子がいて、幸せそうな家族に見えました。犬は60匹程度で、皆とてもフレンドリー。すぐに私と仲よくなってくれました。レイミーは気さくな人で「これからがんばって僕のやり方を学ぶといい。アイディタロッドに挑戦できるよ」と言ってくれました。
私はようやく夢が叶えられる場所を見つけたのです。まだまだ未熟な私ですが、これまでにお世話になった皆さんのためにも、自分の夢のためにも、日本人女性初のアイディタロッド出場を実現できるよう頑張ります。






をあきらめない私の姿に、みんなが勇気づけられれば幸いです。