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私は、観光でアラスカに来られる方々よりもアラスカに詳しくありません。毎日毎日犬の世話やそれにまつわる色々なことをしながら、人里離れた所にこもっていたからです。人寂しくなったら、親方に許可を得て日曜日にキリスト教会に行き、ヒーリーの町の人たちとお話をする。そこが唯一の私の社交場でした。最近まで、フェアバンクスという大きな町にも数えるほどしか知ったことがなかったくらいです。
そんな私のアラスカでの生活をご紹介しましょう。

★魚のスープ作りから!

犬たち(40匹)の餌作りから私の一日が始まります。餌は、魚をドラム缶で煮たものです。私は人間のための料理はにがてですが、犬の料理はちゃんと手づくりしています。そのスープを犬たちに飲ませ、犬舎を掃除した後、犬たちのトレーニングを行います。

トレーニングのない日や空き時間にはトレイル(道)を作ったり、レースに備えてフードドロップ(各チェックポイントにデポする犬の食糧や装備など)の準備をしたり、薪を割ったり、犬たちと遊んだり、犬小屋のワラを入れ直したり、使い終わったブーティース(犬の靴のようなもの)をきれいにたたみ直したり。とにかく仕事はたくさんあります。

レース近くなったら、トレーニング距離も増えるので時間がかかりますし、フードドロップの準備で大忙しなので、その前にできることをどんどんやってしまわなくてはなりません。
★極寒の地の温かい人たち

親方からオフをもらえたり、時間に余裕があるときは、私をアラスカで救ってくれた私のヒーロー、ピーラーの家に行って、罠猟やなめし方を教わったりします。
ビーバーの肉は脂肪分がたっぷりあり、甘いにおいがします。これがレース中の疲れた犬にとてもよく、ビーバーをスナックに与えるマッシャーもかなりいます。私もこっそり生で食べてみましたが、油がひどくて匂いほどおいしくありませんでした。おまけにお腹を下してしまいました。
ピーラーの家までは結構な距離があり、極寒の中を歩いていると、体の色々な場所が凍りそうになってきます。特に頬は一度凍傷になったことがあるので、すぐに痛くなってしまうのです。ヒーリーの冬の平均気温は−20℃くらいなのですが、本当に寒い年は、−40℃が何日も続きます。
そうした危険に満ちた厳しい自然の中で暮らしているせいか、アラスカの人たちは、困っている人を見ると当然のことのように助けます。私が歩いていると、見ず知らずの車が止まって「乗ってく?」とよく声をかけてくれます。そんなとき、外気温は寒くても、心が温かくなるのです。

★オーロラの出る夜

そうして私の一日は地味に終わります。テレビは見られない(電波も届かない)けれど、映画好きのアメリカ人は異常にDVDを持っているので貸してもらったり、古いゴシップ雑誌をもらって読んだりして夜を過ごします。
また、偶然なのでしょうが、私が仕事を頑張った日はオーロラが出る確率が高いのです。本当に不思議。夜、外へトイレに行くときにいつもチェックし、オーロラが出ていなければ「今日は頑張りが足りなかったか・・・」などと勝手に反省しています。